設立以来、衛生指導や刺しゅう製品製作にかかわる技術指導など活動に即し、また現地のニーズや要請に応じていろいろなトレーニングを実施してきました。しかし、組織強化面から現地事務所のスタッフ育成を計画して系統的に実施するまでには至らず、2013年現地訪問でスタッフの基礎力不足を痛感しました。
一人ひとりが「事務所にただいるだけ」ではなく、仕事とは?という基本的な点から「人在」・「人材」・「人才」・「人財」(人が宝)を念頭に、「支配と服従」から「目標と自己統制」に能力を高め成長していくように、体系的な人材養成トレーニング計画をつくりました。主要な点は次のとおりです。
「その日暮らし」「その場かぎり」のあり様から、一人ひとりが何のために雇用されているのか、その役割と責任をよく説明し明確にして、個別に雇用契約を結び、持てる力を発揮して成果をあげるように徐々に組織も整備していきました。事務所の発展期には30~40人を雇用していましたが、改革を機に適正規模に大幅削減し、現在は代表(カントリーディレクタ)、プログラムマネジャー2名を含む常勤スタッフ6名、約11名前後の臨時スタッフは仕事量に応じて雇用調整を行っています。各人の能力を見極めたうえで、代表に集中していた決定権を一部プログラムマネジャーに権限移譲し、各プログラムが目標達成に日々努力し、助け合いながら競い合い、組織全体のチーム力強化につながっています。現地の組織とあわせて日本も担当制を設けて、担当者同士が直接連絡を取り合うことで、密接に迅速に状況把握を可能にし、早期課題解決に取り組んでいます。現在は、徐々に現地組織の独立性を尊重する形態にしています。
現場に問題があっても認識できない、これをこうしたらこうなると先のことを考え、予測や想像することが難しくできない状況から、仕事の目標設定、現状把握と課題の早期発見と解決、振り返りから次の行動へとPDCA(Plan-Do-See/Check-Action)を回していける力をつけて、報告・連絡・相談も円滑に行えるなど、主体的に考え動けるように基本訓練を何度も繰り返し、問題点を具体的に指摘するなど積み重ねが必要でした。
現在は、年間行動計画や予算編成、毎月の達成状況確認と問題の早期発見、年度実績と振返り、そして翌年の計画へと現地スタッフたちで回せるようになりました。
情報不足により人は依存的、無責任、消極的になります。情報共有と情報管理も理解不足でしたので、先ず相互信頼関係を築きながら、役職に応じ正確な情報を双方向に提供・共有していきました。現地のことは現地が良く知っているわけですから、意見を聞き交換することも大事です。しかし自ら意見発信することは消極的で、個別に話すとよい意見をもっているのに、上司の前で発信できない事例もありました。あとでそれは同僚の制止が理由でした。一部には女性軽視の面もありますが、プログラムマネジャー1名に女性を登用し、能力あれば積極的に女性の活躍を応援しています。
人材養成するなかでみえてきた点は、物事を深く考え組み立てる論理的思考、理数系知識や立体的思考力、原因追究や失敗が生かされずその場限りで終わる非効率性、上意下達で意見交換・具申や情報交換に慣れていない、仕事のやりがい=生きがいにならないなど、受けてきた家庭や学校教育、歴史や文化、考え方の相違もあります。常に軌道修正しながら、基本訓練を徹底的に実践する力を養う必要がありました。現場で直接行うトレーニングとインターネットによるオンライン・トレーニングも併用し、個々人そして組織人として能力開発を行うなかで、確実に仕事へのコミットメントが変わり、自発性や創造性の発揮につながってきています。
今後は、段取りや組み立てが円滑にできること、さらに応用力をつけることが鍵です。若い30代の人々はインターネットを駆使し、思考力や発想力も柔軟な面もあり、意欲的で人材資源として大いに期待できます。