目指すもの
学校給食で子どもたちを元気に
バングラデシュでは、公立小学校の学校給食制度が確立していません。農村では、栄養不足のため成長不良の子どもたちが数多くいます。
JBCEAでは2010年より子供たちの栄養改善を願って、農村で地元産大豆を使った学校給食を始めました。地域住民や保護者自らが力を合わせて学校給食を実施運営するモデル校を作り、それが周辺地域に広がっていくことで、より多くの子どもたちが健康に成長することをめざしています。
これまでの活動、そして今
学校給食の開始
JBCEAは学校給食実施のために2009年から行政の許可を得る手続きや、シャシャ郡内で給食を実施する学校の選定を行いました。
電気・ガス・水道がない農村で、どうしたら衛生的に栄養バランスの良い学校給食を作れるか、いろいろ考えながら、調理室の建設や、調理員のトレーニングを行いました。メニューは地元産の大豆を使ったケチュリ(野菜炊き込みご飯)にしました。児童が1日に必要な栄養素の1/3を目指して、1食分の材料を決めています。
2010年に1校で開始し、2011年にはさらに1校を加え、2014年まで2校で実施した結果、給食によって子どもたちの栄養状態は改善し、体格もよくなりました(グラフ)。
また、それまで学校に来なかった子どもたちも登校するようになり、ドロップアウトする子どもも減少して成績もよくなりました。
2012年には、地域住民による継続をめざして経費削減と住民の寄付を考慮し、新たな1校を加えて3校で実施しました。
継続の難しさ
当初の計画では、3年後には地域住民の協力によって継続できることをめざしてスタートしました。
しかし、よい成果が確認できても、日本の支援への依存心や、当事者意識の低さ、村の有力者に対する住民の発言力の弱さなどから、住民から資金の協力を得ることができず、給食は継続できませんでした。3校目の学校も、学校運営委員会内の政治的ないざこざが原因で、学校給食を辞退することになりました。
地域住民参画による学校給食モデルづくりへ
こうした経験を踏まえて、2015年から住民参画による持続可能な学校給食モデルづくりをめざし、住民と共に実施体制を考えながら取り組んでいます。
シャシャ郡内の124校の公立小学校から、規模やアクセス、住民のやる気と可能性、政治的な影響などを慎重に検討し、地域住民と協議を重ね、ジョドナットプール小学校を選定しました。給食室建設や調理員の選定、調理トレーニングなど一つ一つ時間をかけて準備し、地域住民参画の学校給食が始まりました。
給食開始から保護者から毎月米2~3キロを集め、地域住民から寄付を募って、学校・住民組織が中心になって学校給食を運営しています。
児童は空腹をがまんすることなく集中して勉強できるようになり、健康になりました。また学校給食には、下級生の手洗いを上級生が手伝ったり、配膳が早くできるように調理員を手助けする児童のボランティアが大活躍しています。
母の強い願いが給食継続の原動力に
給食経費は、初年度(2015年)から目標を決めて自立度をアップし、最終的に資金のすべてを現地が担う計画で進めていましたが、ほとんどが零細農家や日雇い労働者という貧しい村であること、異常気象による農作物被害のため、地域から寄付が集まらず、一時期学校給食が続けられない事態となりました。しかし、母親たちの強い要望を受け、継続するためにどうしたらよいか協議し、それまで保護者から毎月低学年2キロ、高学年3キロを集めていた米に加え、食材購入のための給食費20タカを集めることになりました。地域住民からの寄付を目標どおり集め、JBCEAは米や給食費が出せない貧困児童が給食を食べられるように費用の一部を支援することで給食が再開されました。
学校給食を継続して運営していくためには、地域住民が担い手として自覚し、地域の協力を広げる地道な努力が必要です。健康増進のための体格測定には母親グループが関わり、また楽しい参画型イベント、学校給食ハッピーデイ(運動会)や児童表彰式など、地域全体を巻き込む新たな取り組みを行って、学校給食の支援の輪を広げています。
今後の課題
学校給食運営の強化
学校給食の運営は、2019年から学校、住民による「学校給食運営チーム(SMMT)」、JBCEAが協力して行っています。公的な組織である学校運営委員会(SMC)の中に、実際に学校給食の運営を行うSMMTを置き、地域の協力者を加えたメンバーで活動しています。児童の健康を支える学校給食が継続していくように、月1回のミーティングで進捗状況を共有し、課題を把握し、協力して解決を行います。 JBCEAはSMMTが学校給食運営の要としての自覚を持って活動が継続するように働きかけを行っていきます。
□学校:食材等の手配、調理配膳の監督、保護者からの米・お金の管理、日々の会計管理
□学校運営委員会(SMC)・学校給食運営チーム(SMMT):地域住民の寄付や保護者からの米・お金集めの働きかけ、運営モニタリング、学校給食イベントの協力
□JBCEA:全体の統括、事業実施の指導・支援、モニタリング、収支バランス・報告書作成
母親たちのネットワークづくり
地域を巻き込んで学校給食を継続していくためには、自分たちの子供を何としても健康に育てたい、そのためにできることは何でもやるという強い意志をもって活動にあたる母親たちの力が必要です。宗教的理由(イスラム教徒が9割の国)もあり、男性のなかで女性が自由に発言するには抵抗がある現状をみると、女性の考えや意見を積極的に発信できる環境づくりも大事になります。
ジョドナットプール村では5つの母親グループを地区ごとに組織し、学校給食の米集めや野菜の寄付を呼びかけるなど、学校給食の継続の協力を行っています。子どもたちが喜ぶようにと、母親たちの発案で月に1回卵や肉を使ったスペシャル給食も行われ、どんなメニューにするか積極的な意見が出るなど、母親たちの参加意識も高まっています。
母親グループの栄養や健康のワークショップや、日頃から情報交換のネットワークを作ることで、互いに学びあい力を発揮できるよう取り組んでいます。
学校給食+健康+教育+笑顔の普及
地域住民参画の持続可能な学校給食には、付加価値として児童が健康になり、栄養や衛生、健康教育につながり、そしてボランティア活動や楽しいイベントなど充実した学校生活は児童の笑顔になります。学校給食の効果は、児童だけでなく、学校給食を支える母親グループを通して家庭に、学校給食運営チームを通して地域住民に広がっています。
コロナ禍で学校が1年半休校となり、学校給食は一時中断しましたが、これからも地域住民が協力して学校給食を継続していくように取り組んでいきます。
また、地域住民参画の持続可能な学校給食を他校に普及していくように働きかけていきます。
※2020年3月17日、新型コロナの影響ですべての学校が閉鎖となり、今後の学校再開と同時に学校給食が再開できるように、現在準備を行っています。
学校給食プログラム紹介動画一覧